「此の世の果ての殺人」荒木あかね

 

まっさらな状態でこの本を読み始めた。

物語の世界で、ぐわんぐわんと頭を揺さぶられる。

いったい、どうなってるのか

いったい、どこへ向かうのか、、

 

 

ぜひ、ぜひ、なんの予備知識もないままで

この本を手に取ってください、、

物語の世界を楽しめること間違いありません。

 

まだ、読んでない人は、以下書いてることは

どうぞ、すっ飛ばしてくださいね。

 

物語は、2022年末、福岡県太宰府市の自動車学校から始まる。

当たり前の日常の様子が、まったく当たり前ではなかったとわかるのは

読み始めてすぐだ。

 

実は、翌2023年3月には、地球に小惑星が衝突するという予測がでており

地球規模の人類の危機、特に、日本の九州は壊滅的となる予測だった。

その発表があったのは、わずか半年前の2022年9月。

人々は、突然のことに、不安と恐怖でパニック状態になる。

他の土地へ逃げる者

どうせ死ぬならと、自ら死を選ぶ者

同じ土地で住み続ける者。

 

非常事態を前にして

最後に人間は、どのように生と向き合うのか。

究極の哲学的問いが、物語の基底にある。

 

物語は、とてもスケールが大きく

最初は、非現実的でシュールな世界のように思えた。

しかし、読み進むにつれてリアルな感覚が沸き起こった。

 

それは、福岡県の実際の地名を用い

その土地の風景の具体的な描写をおりまぜて

物語の情景を目の前に立ち上がらせてくれたからだったし

 

人類の危機を前に

無法地帯、無秩序となっていく世界の中で

それでも

希望を失わない人

秩序を保とうとする人

優しさや親切心を失わない人

死を前に最後の良心を取り戻す人を描く一方で

状況を利用して自己の欲望を満たす人間

他人を踏みつけにして自分が生き延びようとする人間を

目をそむけたくなるほどのいやらしさで描いていたからだと思う。

 

物語の中盤、そして、ラスト

秩序を失った社会で、最も醜い行動をとったのは

権力側の人間であったことがわかったとき

「此の世の果ての殺人」というタイトルのすごさに

背筋がぞくっとしたのであった。