「イニシエーション・ラブ」乾くるみ

 

 

何かを、こうだと、思い込んでいる時は

回りが見えなくなることがある。

 

小さな違和感を感じても

きっとこういうことでは、、と

自分に都合よく解釈したがる。

 

事実は、思い込みが作り出す。

違和感を大切に。。

 

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※「イニシエーション・ラブ乾くるみ

カバーには「最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する」と注意書き。「読み終わった後は必ずもう一度読み返したくなる」と銘打たれたミステリー作品。

 

「ポンコツ一家」にしおかすみこ

 

 

完璧な人間などいないんだから

完璧な家族なんてない。

 

そうわかっていても

完璧でない家族のことは

誰もが、語りたがらない。

 

多かれ少なかれ、どの家族だって

何かしらの問題を抱えているのに

何もないふりをする。

いたって平気なふりをする。

 

だから、こういう本を読んだら

きっと、誰もがホッとする。

自分だけじゃないんだとホッとする。

みんな同じなんだとホッとする。

 

この社会に足りないのは

ポンコツだと言える健全さだ。

 

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※「ポンコツ一家」にしおかすみこ

女王様のSMネタでブレイクした芸人のにしおかすみこのエッセイ。

酒飲みの父、認知症の母、ダウン症の姉の待ったなしの現実

きれいごとではない家族の日常が、さまざまなエピソードとともにつづられる。

 

「芸人と俳人」又吉直樹×堀本裕樹

 

何の気になしに、時間つぶしに

何の期待もせず、ふらっと入った帽子屋さんで

とんでもなくかわいい帽子に出会った。

 

ワタシは、ショップの店員さんが苦手。

そういう職種の人は、おしゃれな人で

ワタシは、その正反対にいる人種。

そして、おしゃれな人は、おしゃれじゃない人を

見下していると、長らく思い込んでいるゆがんだ精神の持ち主である。

 

なので、店員さんが近づいてくる気配を感じると

欲しいなと思うものがあっても

逃げるようにそそくさとその店を後にするのだが

その帽子屋さんの店員さんは、違っていた。

 

見るからに、ファッションセンスのある

今風のきれいでかわいい店員さんで

見かけ的には、ワタシが逃げ出したくなるタイプの一人だったのに

その人の近づき方と話しかけ方と

ワタシとの距離感が本当に絶妙で

買う予定のなかったその帽子を

ついつい買ってしまった。

 

期待も気負いもないところから始めたことが

思いもしなかったところに出口があることがある。

 

又吉直樹の本が読みたくて

対談本だから、軽く読めるかなくらいの気持ちで読み始めたら

全く知らない世界に連れて行ってくれた。

 

本でも帽子でも人間でも、こういう出会いが一番面白い。

 

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※「芸人と俳人又吉直樹×堀本裕樹

俳句に興味を持ちながら、俳句を怖がっていた芸人・又吉直樹が、俳人・堀本裕樹に俳句の基礎を学び、創句、選句、句会、吟行と、俳句の楽しさ、面白さ、奥深さを味わっていく。かつてない俳句の入門書。書下ろしエッセイも収録されている。

「母親になって後悔してる」オルナ・ドーナト 鹿田昌美/訳

 

 

ひとりになりたくて、夜、買い物に出る。

ひとりになりたくて、朝、散歩する。

そうして、このまま、どこかに行ってしまいたいと

何度も思ったことがある。

 

だけど、どこへも行けず、結局家に帰る。

なぜって、それは、自分が、母親だから。

 

夫や子どもに大きな不満があるわけでもない。

どちらかと言えば、自分のほうが

家族の恩恵を受けていることが多いかもしれない。

 

それなのに、時々、思ってしまう。

 

母親を、、やめたい。

 

だけど、その本心を口にできないのは

そんな母親など、いないと思っていたし

いてはいけないと思っていたからだ。

 

だから、この本を読んで、心底、ホッとした。

 

 

この社会は

女性は、子どもを産み、母親となって

社会的規範の一部として存在することを前提として

システム化されている。

 

このシステムを続けてきた先に、待っていたのは

少子化だったと思うと

今の政府が高らかに謳う「異次元の少子化対策」は

現実とは程遠い

文字通り「異次元」なのである。

 

本気で少子化対策に取り組むなら

政治家、官僚こそ、本著を読まねばならないだろう。

 

 

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※「母親になって後悔している」オルナ・ドーナト 鹿田昌美/訳

 子どものことは愛している。それでもー。

 女性は母親になるべきであり、母親は幸せなモノであるという社会常識の中で見過ごされてきた切実な想いをくみ取り、世界中で反響を呼んだ1冊。

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「恋のゴンドラ」東野圭吾

 

 

交通機関が発達し

いろんな場所へ行けるようになった。

たとえ、物理的に行けなくても

インターネットがある。

 

一見すれば、世界80億の人たちと知り合いになれる可能性だってあるけれど

ひとりの人間が一生のうちに出会う人の数は、誰かに、何かによって、決められているんじゃないかと思うことがある。

 

これっきりと思っていた人が

なぜか、その後、またつながったり

偶然出会ったはずの人が

示し合わせたように知り合いの知り合いだったり。

 

世間は狭い。

年を重ねて、つくづく思う。

人間は、出会う人にしか出会わない。

良くも悪くも。。

 

そして、こと、恋愛に関して、世間は狭いは、命取りだ。

 

※「恋のゴンドラ」東野圭吾

 真冬のゲレンデを舞台に、幾人もの男女を巻き込んだ衝撃の愛憎劇。笑ってしまう場面も、臨場感たっぷりの物語で、その笑いも凍りつきそうだった。タイトルのセンスに脱帽。

 

「思いつきで世界は進む」橋本治

 

 

子ども時代、学校でよく目標を立てた(立てさせられた、ともいう)

 

新しい学年になったら、新学年になっての目標にはじまり

テストの目標、将来の目標など個人的目標。

 

さらには、クラス目標、委員会の目標

生徒会の目標、運動会や文化祭などの行事の目標などの

全体的な目標など。

 

そして、その目標に向けての計画、実行、反省

そして、ぐるっと1年回って

次の年には、また目標。

 

そんな学校社会で16年を過ごし

世の中ってそういう風にできていると固く信じて

社会に出たら

案外、でたらめだったので、びっくりした。

 

上司が変わるたびに、仕事のやり方が変わるし

上の担当者が変わるたびに

これ意味あるの?という仕事が増え

昨日までよかったことが

今日はダメと言われ

昨日までアウトだったことが

今日からセーフと言われた。

 

ここには、かじを取る人も

責任を取る人もいないのだなと

すぐに分かった。

 

これは、自分の職場だからかと思ったけど

全然そんなことはない。

今の、この国の政治や経済

世界のパワーゲームを見れば

それは、明らかすぎるほど明らか。

 

なのに、世界がどう進んでいるのか

テレビや新聞などのマスコミ

専門家と言われる偉い人は決して教えてはくれない。

 

彼らは、この国は、この世界は

確固たる信念と目標と計画に基づいて

できているかのように伝える。

 

本当のことを知るには、本物の英知が必要なのだ。

混沌極まるばかりの時代に

本物の英知が、まだこの世にあってほしかった。

 

 

 

※「思いつきで世界は進む~「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと」橋本治

 遠い地平を俯瞰的に眺めて、想像力だけを地に下して現実を低く見るという姿勢で書かれた時評集。著者最後の時代診断。

 

「悪について」エーリッヒ・フロム

 

 

 

「悪」という漢字は

「亜」の下に「心」と書く。

 

「亜」という漢字も

「心」という漢字も

いたって普通の漢字なのに

この二つの漢字がくっつくと

「悪」になり

途端に「劣っている」「好ましくない」「正常でない」と

その意味をまとう。

 

「悪」という字は、見ただけで気持ちを滅入らせる数少ない漢字だ。

 

動物や植物は、「悪」の概念はないはずだから

悪の存在は、きっと人間固有のもの。

だから、きっと人間にしかない(とされている)

「心」が「悪」という漢字を構成しているのかもと思って

気が付いた。

 

「悪」の対義語である「善」には「心」がない。。

 

「悪」を考えることは、「心」を考えることにつながるのかもしれない。

 

 

※「悪について」エーリッヒ・フロム

 『私たちはなぜ生を軽んじ、自由を放棄し、進んで悪に身をゆだねてしまうのか。人間の所業とは思えないような残虐極まりない行為が繰り返されるのはなぜなのか。悪は人間であることの宿命なのか(中略)人を悪へと導く様々な要因を究明するなかで、しだいに「人間らしく生きること」の本当の意味が浮き彫りにされていく』

「自由からの逃走」の続編であり、かつ「愛するということ」と対をなす、フロム不朽の名著。